Francis Bacon

"Three Studies for Figures at the Base of a Crucifixion"

フランシスベーコンはイギリス人の画家である。
彼の作品を一言で表すとすれば「イメージの破壊」である。
その特異性が人々にインパクトを与え、歴史に名を残したのだと私は思う。

彼といえば「Three Studies for Figures at the Base of a Crucifixion」である。
この作品において、重要なのはその名前である。
「Base of a Crucifixion」という言葉を聞いて誰しもが「キリスト」のことを思い浮かべる。
そしてその予備知識を持ってこの絵を見たとき、そこに描かれている異形の物体に驚かされるのだ。
この絵の効果的なところは、描かれている対象が単体であるということである。
そのため名前から連想される「キリスト」と、この生命体が強制的に結び付けられ、鑑賞者に強烈な違和感を与える。
この違和感が鑑賞者を引きずり込むのである。

そしてこの絵はキリストに関連するものをオマージュしている。
左は心霊体の研究資料、真ん中はMatthias Grünewaldの「The Mocking of Christ」、右は怒りや悲しみを描いている。
彼はこの作品は復讐の女神ユーメニデスをテーマにしていると語っており、それを知ると一気に世界が開けてくるだろう。
この絵は迫害され、虐げられる物体の怒りが描写されており、テーマは復讐の女神である。
私は彼がキリストのことを単に異形として描写し、その苦しみを描いたわけではないと考えている。
きっと虐げられしものの象徴としてキリストを用いたのだろう。

彼は同性愛者であり当時、同性愛は罪であった。
第二次世界大戦の最中にあり、人々は絶望の淵にあった。
そんな人々の叫びをこの絵で描いたのかもしれない。