Ernst Fuchs

"The Angel Of The Death Over The Gate To Purgatoy"

エルンストフックスは古典的絵画技法で無意識下の世界を表現しようとしたウィーン幻想派代表的画家である。
華麗な色彩と精密な描画によって、幻想的な世界を写実的に描いている。

彼は壮絶な体験をしている。当時、ナチス政権下で親族のほとんどがユダヤ人強制収容所に送られ、命を落としているのだ。
そう言った経験からか、彼は神ではなく悪魔学へと傾倒し、そういった世界観をもった作品を多く制作している。
その影響が最も出ているのが「The Angel Of The Death Over The Gate To Purgatoy」であろう。

この作品の面白いところは「明るい」ところである。
作品名に含まれるAngel of Deathという言葉から連想できるように、この作品は悪魔的絵画である。
一般的に悪魔や、黒魔術というものから連想されるのはズルズルと這いずるような世界であり、
色で表すならば黒・紫である。

しかしながらこの作品は豊かな色彩を用いて描かれており、その効果によって描かれた存在が忌避されるような存在ではなく、
むしろ親近感すら覚えてしまう存在に感じてしまうのだ。
この辺りが彼の悪魔学や神秘学への傾倒を感じさせる部分である。
ドロドロとした世界観に憧れたイタいやつではなく、本当に救いだと感じていたのだろう。

悪魔崇拝というのは神の存在に対するアンチテーゼである。つまり、神への失望や憎しみといった感情が根底にある。
彼は過去の過酷な体験で神という存在に対してこの上ないくらい失望したのだろう。
きっとその作品から滲み出る強い思いが、彼の作品をここまで有名にしたのである。